近年の通信機器にはIPv6対応か非対応が記されており、一体何だろう?と疑問に思っている方が多いではないでしょうか。
本記事では、一体なぜIPv4でからIPv6に変えると速くなるのか、について現役のネットワークエンジニアが解説していきます。
結論から言うと、自宅などの固定回線のネット速度を速くするには(FPS等のオンラインゲームなどで重要)IPv6対応が必須級になってきます。
※なお、言葉の使い方として「IPv4が速い」「IPv6が速い」という表現は誤っていますが、イメージを伝えるために何回か上記表現をするかと思います。
IPv6ってどんなもの?
IPv6が何かを説明する前に、IPv6と対になっているIPv4の説明から行い、なぜIPv6が生まれてきたのか解説していきます。
IPv6が生まれた経緯
インターネットに繋がる通信機器は必ずIPアドレスが割り振られています。インターネットの世界ではIPアドレスは住所のような役割を果たしています。
住所があるからこそ、自分と相手で通信パケットのやり取りができています。
この住所(=IPアドレス)がIPv4アドレスと呼ばれるものです。
この住所は他と被ってはならない条件のもと、約43億個まで通信機器に割り当てることができます。
IPv4アドレスが枯渇してきている
各通信機器にアドレスを被らず割り振る必要があるため、2011年頃から「そろそろ枯渇してくる」言われ続け、実験や検証に使うために開けておいたIPアドレスも開放して頑張って色々やりくりしてましたが、ついに2019年11月25日に全て枯渇しました。
枯渇したということは、新しい通信機器にIPv4アドレスを割り振ることができなくなってしまいました。
(割り振ることができなければ、当然インターネットに繋げなくなります。)
IPv4の枯渇に伴いIPv6が登場
IPv4が枯渇するのは時間の問題だと言われていたため、IPv6という技術は昔からあらかじめ考えられていました。
IPv4アドレスは、0~255の値を4つ並べたものです。(192.168.1.1とか見たことあるかと思います)
組み合わせとしては255の4乗なので、約43億通りの値を持ちます。(43億個のアドレス空間を持つ)
一方、IPv6アドレスは、0~9、A~Fの16の値(16進数)を4桁並べ、それを8つ並べたものです。
16の32乗、つまり43億のさらに4乗(約340澗(かん))通りの値を持ちます。(340澗個のアドレス空間を持つ)
IPv4にくらべ、えげつない広さを持っているのがIPv6なのです。
IPv4アドレス例 | 192.168.1.1 | ||
---|---|---|---|
IPv6アドレス例 | 2001:db8:85a3::8a2e:370:7334 |
IPv6で速度が速くなる理由は接続方式が変わるから
現在使われている接続方式としてIPv4でPPPoE、IPv6でIPoEと呼ばれる2種類があります。この違いが速度差を生んでいます。
IPv4はPPPoE接続方式
IPv4ではPPPoE方式が採用されています。
自宅の機器からまず回線網の終端装置に入ります。
ここでPPPoE接続の認証を行っており、複数の契約者が必ずここを通る必要があるんです。
ということは、この網終端装置で大量のトラフィックを処理する必要が出てくるというわけです。
網終端装置といえど実態は家庭のルータよりも性能が良い企業向けルータなので、認証処理能力には限界があります。
なので、インターネット利用者が多い時間帯には処理速度の限界近くに達し、通信速度が低下する事象が起きてしまいます。(よく帯域制御と言われる類のものです)
IPv6はIPoE接続方式
IPv6ではIPoE方式が採用されています。
IPv4と比べると、網終端装置を通らなくて良いという大きな特徴を持ちます。
つまり、トラフィックが集中するポイントを通らないため、エンドtoエンドで高速通信が実現できるんです。
また、PPPoEでは技術的に1Gbpsが最大速度でしたが、IPoEでは最大10Gbpsとなります。
それにIPv6を利用するユーザーもまだ少ないこと、網終端装置の代わりとなるゲートウェイルータが大容量であること等から、IPv4とは別のルートのためガラ空きということも影響して通信速度がかなり出ています。
IPv6でも遅い場合は何が原因?
IPv6でも遅い場合は、以下の2点が考えられます。
- プロバイダ側でIPoE方式ではなくPPPoE方式を採用している
- 回線事業者側で帯域制限している
以下で説明していきます。
プロバイダ側でIPoE方式ではなくPPPoE方式を採用している
IPv6の場合でも、プロバイダ側がIPoE方式に対応していない場合は、PPPoE方式で接続されます。そのため、PPPoE方式だとIPv4と回線速度が同一となります。
速度改善したい場合は、IPoE方式に対応している事業者を選択する必要があります。
回線事業者側で帯域制限している
例えば、NTT東西の初期のフレッツ光 ですと帯域制限され、最大通信速度上限が100Mbpsや200Mbpsで提供されていたことがあります。
IPv4とIPv6の整理まとめ
IPv4とIPv6の特徴をまとめると以下のようになります。
IPv4の利用者がまだまだ多いことから、網終端装置でトラフィック輻輳を起こしているのが速度低下の原因と考えられます。
IPv4 | IPv6 | |
IPアドレス数 | 約43億個 | 約340澗(かん)個(43億の4乗) |
接続方式 | PPPoE | IPoE |
網終端装置の有無 | あり | なし |
対応機器 | IPv4対応のルーター | IPv6対応のルーター |
トラフィック輻輳 | よく起きる | ほぼ起きない |
IPv6だとIPv4アドレスのみを持つサイトは見れない?
基本的にどのサイトもIPv4に対応していますが、IPv6に対応したサイトはまだまだ少ないです。(YouTubeやGoogleのGmail、FacebookなどのWebサイトは、IPv6に対応しています。)
IPv6の住所を持っていないサイトにはIPv6ではアクセスできない問題点がありますが、以下の技術で解決しています。
IPv4 over IPv6
IPv4 over IPv6という技術があります。
簡単に言うとIPv6アドレスを使ってるけど、IPv4のサイトにアクセスする際は手前でアドレスを偽装してIPv4のサイトへアクセスするような技術です。
つまり、IPv6が使えれば様々な技術によりIPv4の世界にもアクセスできるということで、僕たち利用者からすると、以前と何も変わらずインターネットを楽しむことが可能になります。
インターネット速度を今よりもさらに速くしたい場合は、IPv4ではなくIPv6対応のIPoE方式を採用した光回線と契約しましょう。
IPoEに対応した光回線の選び方
以下にIPoE対応の光回線を挙げておきます。
もしこれから光回線を契約する場合や、変更したい場合、以下から選ぶのが最適解となります。
最大速度ではなく平均速度を重要視する
特にnuro光は独自回線のため、元々の回線速度が2Gbpsとどこよりも速く、特別な理由が無い限りは一番スピードが出ます。
平均速度は「みんなのネット回線速度」さんの結果を基に算出しています。
光回線速度 | 最大速度 | 平均速度 | IPv6対応 |
---|---|---|---|
nuro光 | 2Gbps | 479.6Mbps | 〇 |
eo光 | 1Gbps | 465.25Mbps | 〇 |
コミュファ光 | 1Gbps | 456.66Mbps | 〇 |
<参考>ソフトバンク光 | 1Gbps | 305.34Mbps | 〇 |
<参考>フレッツ光ネクスト | 1Gbps | 263.17Mbps | 〇 |
「1Gbps=1,000Mbps」なので、平均値としては最大速度の3~4割程度と捉えてください。
参考値として、携帯電話会社のソフトバンクとNTTの回線速度も記載しておきますが、nuro、eo、コミュファが圧倒的に速いのが分かるかと思います。
全てIPv6s対応しておりIPoE方式を採用していますが、ここまで結果に差が出てきているのは、通信設備や発生トラフィックの混雑具合の影響があるのが原因です。
現在の工事費やキャッシュバックについて
どこの回線事業者を選んでも工事費は基本的に実質無料になります。
※実質無料と言っているのは、工事費として支払うがその分を毎月の月額料金から割り引くことで実質無料となる意味です。
光回線種類 | 月額料金 | 工事費 | キャッシュバック |
---|---|---|---|
nuro光 |
5,200円 | 実質無料 | 45,000円 |
eo光 |
3,248円 | 実質無料 | 10,000円 |
コミュファ光 |
ホームタイプ:3,980円 マンションタイプ:3,380円 |
実質無料 |
ホームタイプ:35,000円 マンションタイプ:40,000円 |
<参考>ソフトバンク光
|
ホームタイプ:4,180円 マンションタイプ:5,720円 |
最大26,400円 | 最大50,000円 |
<参考>フレッツ光ネクスト
|
ファミリータイプ:4,950円 マンションタイプ:2,640円 |
ファミリ-タイプ:19,800円 マンションタイプ:16,500円 |
最大79,000円 |
キャッシュバックがあるので、工事費は相殺されて実質無料となるところが多いですが、nuro光、eo光、コミュファ光の場合は工事費実質無料な上に、キャッシュバックが付いているので最もお得に契約することができます。
まとめ
本記事では、IPv4とIPv6の違いについてご紹介してきました。
今後光通信回線を契約する場合は、PPPoE方式ではなくIPoE方式のIPv6に対応した回線事業者と契約するのが最もお勧めです。
PPPoEでは加入者全世帯が網終端装置を経由する必要があり、通信トラフィックが混雑してしまう方式であることが速度が遅い原因です。
中でもnuro光は光回線の中でも最大通信速度が2Gbpsと最も速く、平均速度も479.6Mbps(2021年8月30現在)と速いのが特徴です。
オンラインゲームで遅延を感じたくない方や、夜の通信速度低下に悩んでいる人はぜひ契約変更を検討してみてください。